103万円の壁について
国民民主党が提案したこの問題。簡単に説明しておきます。中3で習う社会の公民分野に属する内容です。
今の時期、だいたい毎年2月中旬から3月中旬までは、税務署に1年間の所得申告をして、翌年からの地方税や社会保険の額が決まっていきます。
その際、いくつか「所得から差し引く項目」があり、「〇〇控除」と呼ばれています。103万円というのは、所得税の扶養控除(配偶者控除)を受ける要件としての、配偶者の収入の上限額です。
基本的に、お父さんが仕事をしていておかあさんがパート勤めをしている場合、勤務先から受け取る給与の合計が103万円を超えなければ、お父さんの収入に課せられる税金に変化はないことになっています。
この上限額が「103万円」になったのが1995年です。当時の最低賃金は611円だったのですが、この賃金で週30時間ほど働いても、課税されなかったのです。実際に103万円を時給611円で割ると約1,685時間、週32.4時間となります。
ところが、2024年度の全国平均の最低賃金時給は1,054円です。103万円を1,054円で割ると約977時間、週18.7時間。つまり現行では最低賃金でも週18.7時間までしか働けないことになります。これは日本国憲法第25条にある「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」に反しているとする考えがあります。
特に平成の30年間、巷間言われているように、賃金は上がらないのに徴収される税金・保険金は増える一方であり、最低限度の生活を営むためには、これを上げる必要はあると言えます。国民民主党の主張する178万円で計算すれば、1995年当時の計算に近くなります。(1,780,000÷1,054≒1,689時間。1,689÷52週≒32.4時間)
さらに地域差はありますが、東京都内のある公立保育所の場合、2024年度の保育士の求人は時給1,800円でした。年間103万円までとすると、週11時間しか働けません。すなわち常勤職員1人分の労働時間を充足させるためには扶養の範囲内で働く保育士が4人必要となるのです。保育士不足の中、これでは配置基準を満たす人員の確保でさえ苦心する状態と言えます。
ちなみに今般議論されている「178万円」は、103万円に最低賃金の上昇率1.725倍(1,054円÷611円)を乗じた金額です。仮に178万円になったとしても時給1,800円では週19時間労働の計算となりますので、人手不足解消にはまだまだ足りないとは感じます。
連日、東京霞が関の財務省前では、財務省解体を叫ぶ1,000人規模のデモが行われています(なぜかテレビ東京以外は報じていませんが)。外国のデモとは違い、混乱なく行われているようです。皆さんもこのニュースについてはぜひ関心を持っていてほしいと思います。
